千葉家庭裁判所佐倉支部 昭和46年(家)44号 審判
〔主文〕本件申立てを却下する。
〔理由〕(申立ての趣旨)
申立人が被相続人亡杉本さく所有名義の別紙物件目録記載の土地について東京都練馬区○○○△丁△△△目番地久保田くにに対し、昭和九年八月二四日の時効取得を原因とする所有権移転登記手続をなすことの許可を求める。
(申立ての実情)
一 申立人は昭和四六年一月二二日被相続人の相続財産管理人に選任された。
二 申立人は同年二月八日久保田くにの代理人弁護士石原秀雄から同月五日付内容証明郵便をもつて申立の趣旨記載の土地(以下本件土地という)について久保田くにのため時効取得を原因とする所有権移転登記手続をするよう請求を受けた。
三 申立人の調査によるとその事情は次のとおりである。
(1) 被相続人は大正八年七月一九日上記最後の住所地で死亡し、その相続人のあることが明らかでないため、上記一の手続がとられることになつた。
(2) 久保田くにの父亡杉本弥市は昭和九年八月二三日死亡したが、弥市と被相続人とは本家と分家の関係にあり、近所に住んでいたことからも、被相続人の晩年には同人やその父亡杉本幸太郎の生計費などを負担し、療養看護にもつとめた。
(3) 被相続人の死亡後は亡弥市が本件土地を管理し、本件土地の地租などを支払つてきた。
(4) 久保田くには、亡弥市の死亡によつて同人の家督相続をし、以後本件土地を自己が相続したものと信じて占有管理し、その地租、固定資産税、区賦課金などを支払つてきた。近在の者も久保田くにの許可を得て本件土地を利用している。
(5) 久保田くには前任相続財産管理人が昭和四五年九月二〇日付官報に掲載した相続債権者受贈者への請求申出の催告に対し同年一一月五日付内容証明郵便をもつてその請求を申し出た。
四 本件土地については現在まで久保田くに以外に権利を主張する者がないので同人の請求を正当と認め、本件土地について同人のため所有権移転登記手続をとりたいので、これについて許可を求める。
(判断)
申立ての実情一の事実は当裁判所に顕著な事実であり、同二の事実は申立書に添付された内容証明郵便(写)によつてこれを認めることができる。ところで、次の事実は当裁判所に顕著な事実である。すなわち、被相続人は大正八年七月一九日本籍地で死亡した。久保田(当時沢田)くには杉本弥市、同うめと養子縁組をなし、同年四月一〇日その届出をした。弥市は昭和九年八月二三日本籍地千葉県○○町大字○○△△△番地で死亡し、杉本くにがその家督相続をした。杉本くには申立人と婚姻し、昭和一五年五月七日その届出をしたが、同年三月二日東京市○○区で長女邦子を分娩した。申立人は昭和二八年一月八日付で千葉県○○町○○△△△番地から住所地(編注・東京都△△区)へ転入の届出をした。久保田くには世帯主として昭和三〇年四月一二日から千葉県○○町○○△△△番地の住民となつた旨の届出をなし、本件土地について昭和四二年以降の固定資産税を納付してきた。同人は昭和四五年四月二四日被相続人の相続財産管理人選任の申立てをなし(当庁同年(家)第一八九号)、同年六月一〇日その相続財産管理人に選任されたが、同人の同年三月一八日付○○町長に対する納税証明下附願二通には申立人と同じ住所地が記載されている。同人はその住所地から同年一一月五日付内容証明郵便をもつ千葉県○○町○○△△△番地杉本ふみ子方の相続財産管理人久保田くにあてに本件土地について自己のため所有権移転登記手続をするよう請求した。同人は同年一一月二一日弁護士石原秀雄を代理人として相続財産管理人の職務と利益が相反するとの理由で相続財産管理人辞任の申立てをなし(当庁同年(家)第四三四号)、昭和四六年一月二二日その辞任が許可されて、同時に申立人が被相続人相の続財産管理人に選任された。
上記のような事情と久保田くにの本件土地の取得原因が時効取得であることを考えると、その取得原因の有無について民事訴訟において事実を確定することが相当であり、そのうえで申立人の申立ての趣旨を判断するのが相当である。申立人は久保田くに、山口あさ、杉本兵三から事情を聴取するよう求めているが、事実の調査によつて時効取得の成否を審判するのは相当でない。
よつて、本件申立てを却下することとし、主文のとおり審判する。(加藤一隆)